『ありがとう』
笑顔、笑顔。
何事も無いですよって感じでいつものように明るく振舞わないと。
まだ好きだと思われたくない。
だけど隣に奏多がいるだけで心が安らぐというか顔が緩むというか…複雑な感じ。
ちらっと横を見たその瞬間。
『っ………!』
奏多とばっちり目が合った。
そして、奏多の手が私に近づいてくる。
細くて骨張った大きな手が顔に……。
『やっ…!』
「あ、ごめん…。顔にチョークの粉が付いてたから」
自分が恥ずかしい。
ただ、粉を払おうとしてくれただけなのに勝手に意識して突き放して。
私、バカみたい。


