マスターはきっとカクテルとか作って腕を披露したいんだろうけど、僕はその分マスターと話したかった。
「腕がすたるって言えばミクちゃんも同じなんだけどね」
 その言葉に彼女の手元を見た。彼女はバーボンを飲んでいるらしい。氷がグラスにあたって心地いい響きをさせている。
「なに飲んでるの?」
 僕の問いに少しびっくりしたような顔をしながら、はにかむように笑った。
「フォーローゼス。ロックで飲んでるんだ」
「へぇー女の子でバーボンなんてすごいね」
「え? そうなの?」
「そうでしょ~? 普通の女の子はカクテルとか好きなんぢゃないの? チューハイとか。あとビールとかさ」
「私、お子様だからビール飲めないんだよね」
「お、お子様って・・・バーボンってオヤジの領域ぢゃん?」
「え? そうなんですか? マスター?」
「ははは、確かに渋い領域だね。まぁ、ミクちゃんならオッケェでしょ」
「それって私がおぢさんってことですか?」
 ぷぅっとほっぺを膨らましてすねる姿が・・・・カワイイ。
 マスターが気を利かせて話題を変える。
「雄太郎は車の免許持ってる? ミクちゃんは持ってたよね?」「持ってますよ」
「私ももってる」
「ぢゃあさ、どんな車がすき? 形容詞で言ってくれると面白いんだけど」
「えぇっと、僕は個性的なのがいいなぁ。世界でひとつ、みたいな。まぁ、現実的には無理だからきびきび僕に答えてついてこれるヤツがいいなぁ。乗り心地もサイコーでグレードの一番いいヤツ。本当にいい車だったら、中古車でもいいなぁ。ミクちゃんは?」