「大和くんとも話して来れば?クラス一緒だったんでしょ?」

「いいよ、別に」




お母さんがいちいち訪ねてくる事に
いい加減嫌気がさしてきた。


お母さんもお母さんでしつこい。


いい加減に気づいてくれないだろうか。


そう思っていると後ろから
いかにも上品な声がした。




「あら沙希ちゃん、こんにちは」

「こんにちは、おばさん」




大和のお母さんだった。


黒に白いレースの付いたワンピースを着込み、
ネックレスやイヤリング、指輪などの
アクセサリーをこれぞとばかり付けている。


相変わらず派手だな、と思った。


辺りを見回したが、大和の姿はなかった。
それもそうか。



小さい時、小学生ぐらいの時に聞いた話。


大和は派手で上品で、いかにも”セレブ”な
母親を心底嫌っていた。


実は大和の父親は財閥の最高責任者らしい。


お金持ちなのは昔から知っていた。


それでも大和と大和のお母さんは
それを気取る事はない。


ただ、大和のお父さんだけは
権力とかお金とかにうるさいらしい。