俺がぶつかったのは女子だった。

「って〜君大じょ「悠斗〜!どこだ!おめーがいねぇと勝てねーんだよ!
「はあ?ふざけんな!陸上部が先だ!」
「悠斗くーん!遊ぼ〜よ〜」

まだ追いかけて来てたのか…なんて考えていると、
「あの…お怪我はございませんか?」
と、ぶつかった子が聞いてきた。俺は、
「俺は大丈夫。君は?」と返した。でも俺は、同時にドキッとした。それは、ぶつかった子があまりにも可愛かったか
ら。

パッチリとした二重のおおきな瞳に、
真っ赤な唇。栗色の髪の先の方をくるんと巻いていて、薄いピン色のワンピースに白い日傘をさしていた。

「私は大丈夫です。あの…沢山の方々に呼ばれていたようですが、大丈夫ですか?」
彼女がそう答えた声も可愛らしかった。俺は大丈夫かと聞かれたから、少し戸惑ったけど、
「あぁ…あいつらはほっといていいんだよ。むしろ逃げてたから。」
と答えた。すると彼女は、
「そうなんですね…では私はこれで失礼します。」
と言って立ち去ろうとしていた。俺は、名前だけでも知っておきたいと思って、

「俺、北浦 悠斗!君の名前教えて?」
と言った。俺は焦った。彼女が戸惑っていたから。ただぶつかっただけの男に名前なんて聞かれて戸惑わないはずがな
い…そんなことを考えながら焦っていると、
「私は霧島 理恵。さようなら。悠斗さ
ん!」
と、笑顔で答えてくれたのだ。そう言い残して、彼女は去って行った。


霧島 理恵…か……

また会えたらいいな…