無理して笑うな


〈悠斗said〉

唯の涙を見た。



うつむいていた顔を上げ、笑って見せたときだった。




「唯!」




『バイバイ、悠斗。』




いくらそんなことを言われたって俺は、唯を追いかけることしか頭になくて楽屋から飛び出した。



しかしこのコンサート会場の裏側はいろんなパフォーマンスを手助けするためか複雑に入り組んでいる。



蓮の話では衣装室や小道具を置く部屋などとすぐに行き来できるように、いろんな道を作っているとのことだった。



俺がそんな所で迷わないはずもなく




「…っ…唯!」




楽屋を出ると唯の姿はどこにもなかった。




「…っ…くそっ!」




気づくと俺は ガンッ と言う音を立てて壁を殴っていた。



それから俺は壁にもたれかかった。




「はは…何やってんだろ、俺は。」




6年前のあの日から、俺は唯が泣いて走り去って行くところしか見ることはできないのか。




「なんっ…で…」




そのとき、携帯が鳴った。




「…はい。」




『悠斗〜。』




その声は蓮だった。




『無理だったみたいだね、仲直り。

今俺の目の前を唯が通って行ったんだけど、泣きながら。』




蓮は呆れたようにハハッと笑った。




「…蓮。俺、昔どう唯と話してたか忘れたっぽい。」




『そらそーだろうな。なんせ6年も会ってないんだから。』




人が本気で悩んでるっていうのに、こいつ笑ってやがる。




『まあ、5割ぐらいの確立でこうなるだろうな〜ってのは分かってたんだよ。』