無理して笑うな


俺は固まってしまった。



唯も固まっていた。



唯の目は驚きに見開かれており、じっと俺を見ている。



こんな近くにいるなんて



どんなに夢見てきただろうか




「唯…」




しかしその声は唯には聞こえない。




「きゃーーー!!!」




ファン達の声にはっとしたのか、唯の目は一瞬泳いだ。



そして由奈を見てから、反対側の通路に目をやった。



達也はもうすでにステージに上がっている。




唯は急いでその場から離れると、ステージに向かって行った。




唯の姿が遠のいて行く。



その少し走っているようにも見える背中は



俺から逃げているようにも見える



6年前のように、俺はまた唯の背中を何も出来ずに見送っていた。