無理して笑うな


「ゆい〜〜〜!!!」




俺はあの時、力の限り叫んだんだ。



でも唯の家からはもちろん誰も出てこなかった。



いつもなら2階の窓から声をかけてくれる4歳年上の唯のお兄ちゃんも、顔を出さない。



その場に座り込んで泣きじゃくる俺を、隣の家から出て来て抱きしめてくれたのは妹の瑞希だった。



瑞希はうすいピンク色の封筒を俺に手渡して言った。




「瑞希が帰って来たら、ちょうど唯ちゃんがいたの。

それでどーしたの?って聞いたら、これを兄ちゃんに渡してって。」




俺はうすいピンクの封筒を眺めた。



そこには唯の小学生にしてはキレイな字で『悠斗へ』と書かれている。




「それで、ちょっと遠くへ行くからいつになるか分からないけどまた会おうねって、瑞希をぎゅってしてくれたんだ」




瑞希も泣いていた。



唯に懐いてたもんなぁ。



俺の言うことより唯の言うことの方がよく聞いたもんなぁ。



俺は泣きながらそう思った。