あたしは自然に拓真君の腕の中で泣いていた。
長く感じた5秒が終わり、監督が合図をだす。
拓真君はそれを見るとあたしの肩を持ってゆっくり離した。
「桜、俺が美玲といたのは…」
「美玲ちゃんと、付き合ってるからでしょ」
あたしは顔に手を当てながら呟いた。
あー、
拓真君が悠斗に見えてきた
こんなこと正面から悠斗に言ってみたい
やっぱりあたしは悠斗が好きなんだなぁと
今更ながら思う。
「っ…違う!美玲には、相談してて…その…」
「なんの相談よ。」
ここで桜は口を尖らす。
素直になれない桜特有の仕草だろう。
「……ああ!もう!!」
そんな桜を見て、陸は桜を引き寄せて…
キスをするのだ
桜は驚いて目を見開く。
しかし、あたしは違うことに目を見開いたんだ
本番はフリだけで、本当にキスはしないはずだった。
なのに…
拓真君はあたしを離すと顔を覗き込んできた。
あたしはもう、演技どころじゃない
桜の様に、本当に驚いて拓真君を見ていた。
「どうやったら、お前に振り向いてもらえるかって相談だよ。」
「はい、カット!2人とも!最高だよ!!これでいこう!」
ここは1番難しかった場面でもあり、スタッフの人達も拍手してくれた。


