そのとき、あたしの目からは自然と涙がこぼれた。
監督も、スタッフの人達も おお!と声をあげる。
自分でもこんな風に泣けるとは思わなかった。
悠斗のことを考えると当たり前のように涙が出てくる。
…お幸せにね
あたしは、アイドルだから誰かと付き合うとかそんな簡単にいかないけど
いつか、いい人現れないかな
悠斗を超えるような、かっこよくて、優しくて、あたしのことを1番に思ってくれる人が
あたしのところにそんな人現れるんだろうか
「桜!?」
拓真君が驚いた顔をして近づいてきた。
あ、今撮影中だったんだ
すっかり忘れてた
「…なんで、泣いてるんだよ」
拓真君ならぬ陸が心配そうにあたしを覗き込んだ。
さっき、あたしが悠斗とミナを見てたことを知ってるからか
あたしが泣いているのを見て心配そうに顔を覗き込む陸の中に、拓真君の眼差しもある。
気遣うようにあたしを伺っている
「だ、だって…陸がここにいるなんて、夢みたいで…」
あたしの目からはまた涙が溢れ出した。
「桜…誤解なんだ。美玲とは何もないんだよ。」
陸である拓真君はあたしを抱きしめた。
それから5秒、桜が陸の腕の中で泣くシーンだ
…泣かなくちゃ
あたしが額を拓真君の胸に押し付けると、拓真君は抱きしめたままあたしの耳元で囁いた。
「今、悠斗のこと考えてる?」
その声はあまりにも小さく、スタッフには聞こえない。
あたしは泣きながら小さく小さく頷いた。
確かにあたしは演技で泣いてるんじゃない。
そんなことを言われると自然に涙が出てくる。
「…いいよ。泣いて。今なら、泣いても気づかれない。みんな演技だと思うから。」
拓真君は優しく抱きしめる腕に力をこめた。
「僕が、唯ちゃんの側にいるから。」


