ごめんなさい





あたしはそう、心の中で呟いた。




悠斗、あなたを仕事に利用する。


さっきの悠斗とミナのことを思い出したら、自然に泣ける気がした。





「用意、スタート!」




監督の声が響き、向こうから拓真君が走ってくる。






…さあ、泣かないと



あたしの演じる桜は、他の女の子のところに行ってしまった幼馴染みの陸がこっちに向かって来るのを見て泣くんだよ。







泣かなくちゃいけない。




桜になり切れ








でも、拓真君が走ってくるのを見て、何も感じなくて





監督やスタッフの人達から焦りの声が聞こえる。




本当にごめんなさい




あたし、役立たずだね










そのときあたしは、なぜか悠斗との小学校生活のことを思い出した。



小学生のときまでしか知らないけど、悠斗ならきっと笑顔で


大丈夫!もう一回やろ!


って言ってくれるはずだ





優しいから





そう、悠斗は優しい





だから、悠斗があたしのことをブスって言ったのは


照れを隠すためなんだって初めから分かってた。




悠斗の顔を見たくなくて、家にこもっている頃から分かってたんだ。




でもあたしは素直になれなかった。



手紙で『大嫌い』って、自分の気持ちと全く正反対のことを悠斗に伝えた。



ごめんなさい、悠斗



だから、あなたが他の女の子といてもあたしは何も言わない




言う権利もない




悠斗はかっこいいからきっとモテる



だから女の子と一緒にいることも、彼女がいても何も変じゃない








もう、諦めるよ