もう夜だったこともあり、歌番組の収録が終わると出演者やスタッフ達はぞろぞろと帰って行った。




「じゃあお先、失礼〜!みんなまた明日ね!」




「ばいばーい!唯ちゃんお大事にね〜。

明日熱あったら僕が病院まで引っ張ってくよ〜!」




亜依と達也もそう言って楽屋を出て行った。



あたしは手を降ると荷物をまとめを再開した。




ドラマの撮影が終わってからここまで猛ダッシュで来たので鞄の中はもうめちゃくちゃだった。




「じゃ、俺も帰るわ。」




「あ、ひどい。蓮、家近いんだから途中まで一緒に帰ろうよ〜。」




あたしが顔も上げずにそう言うと蓮は肩をすくめた。




「斗真、唯を家まで送ってってやれよ。」




「え、いーよいーよ!斗真は家遠いから悪い。」




「別に、俺は構わないけど。」




あたしがそう言っても斗真は首を振った。




「ん、じゃーそういうことで。」




蓮はヒラヒラと手を振るとバタン、とドアを閉めて行ってしまった。




「薄情者。ごめん斗真、本当に大丈夫だよ。」




「……じゃあ、せめてそれ手伝う。」




斗真はあたしの身の周りの、散らかった荷物を指差した。




「それに、楽屋の部屋の鍵返しに行かないとだし。一緒に行くよ。」




「ごめん、ありがと!」




斗真の笑顔に、あたしは甘えることにした。