「お久しぶりです!ただいま戻りました!!」




俺がエレベーターの方を見ると、そこには笑顔で入ってくる宮森 拓真の姿があった。




「おお拓真君!一昨日ぶりだな。」




「顔合わせはどうだった?嵯峨山 唯ちゃんとは上手くいきそうかい?」




そんな声が事務所中から飛び、宮森 拓真は一つ一つに笑顔で答える。




「すいません、なかなか顔出せなくて。」




「楽しかったですよ!それがめっちゃ気が合うんです!今回は上手くいきそうです。」




俺は息をのんだ。



事務所のエースでトップモデル、しかも俺と同じ歳だというから、どんなやつなんだろうと思ってた。



嫌味なやつなのかとか、俺様なのかとか、いろいろ想像した。



けど見た限り実物は常に笑顔で



人当たりが良さそうな宮森 拓真はその通り、みんなに一目置かれているようだった。




「ああ、社長のことは拓真君に聞いたらいいかもしれんな。拓真君は社長の歳の離れた弟だから。」




「弟!?」




俺は驚いて神崎さんを見た。




「ああ、本名は太田 拓真君。宮森は芸名だよ。2人が姉弟だってことは一部の人しか知らない。」




「太田 拓真…」




それってもしかして…



俺の頭の中で6年前の記憶がぐるぐると回り出した。



神崎さんが言うには、隠しているわけでもないが2人は姉弟だと言うことをあまり知られたくはないらしい。



宮森 拓真がトップモデルになれたのは実力で、決して特別扱いを受けているわけではないからだそうだ。



でも現在、社長が実質マネージャーを務めているということはそれだけ目をかけているのだろう。




「拓真君!ちょっといいかな?」




「ああ、神崎さん!お久しぶりです!」




俺は宮森 拓真が近づいて来てもどうしようも出来なかった。




いや、ここにいるのは宮森 拓真だ。



あの太田 拓真じゃない。



実際6年前に俺と唯が喧嘩したのはこいつのせいじゃなく、自分のせい。



それは俺が1番分かっているはずだ。