お母さんは運命の人だ何だって能天気なことを言っているが大体、運命の出会いなんて誰が言いはじめたことなんだろう。やっぱり神様なんだろうか。神様には悪いけど私は、運命の出会いなんてどうでもいいと思っている。理由はないけど、運命とか奇跡とかって、バカバカしく思えてくるんだ。こんなこと思ってる人って、そうそういないと思う。
 運命の出会いとかそれ以前に、久遠さんにはきちんと私の気持ち言わなくちゃ。ごめんなさいって……。


「おはようございます寺島さん!朝ですよ」
 看護師さんが私を起こしに来てくれた。
「…ん?おはようございます……」
「今、朝食持ってきますね」
「はーい…」
 ガラガラ…ピシャ
 私は夢を見た。夕焼けでオレンジ色に染まった髪、私のほうにゆっくり振り向く。それは、久遠さんだった。どんどん私に近づいてきた久遠さんは、私にゆっくりキスをしたのだった。
 そこで夢は途切れた。なんだか複雑な気持ちになっていた。
 コンコン
「はーい」
「朝食持ってきましたよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、後で食器取りに来ますね」
「お願いします」
 病院のご飯は意外とおいしかった。私の想像していたものとかけ離れていた。新たな発見が出来て嬉しかった。
 コンコン
「はーい」
 看護師さんだろうか。
 ガラガラ……
「おはよう」
「久遠さん!」