「美歩、いいの?」
「うん!だって、好きな人いるって言ってたし、それにわたし、先輩に幸せになってもらいたいから」
「でも…」
「も~、大丈夫だから!直海は心配しなくて大丈夫だから」
「…うん」
 美歩の言葉が痛かった。
「美歩、あのさぁ…」
「何?」
「…やっぱり、なんでもない!」
「なんだよぉ~、気になる!」
 
 美歩に本当のこと言おうと思った。けど、美歩が私のことを嫌いになるんじゃないかと思ったら、なにも言えなかった。その時のわたしはただの根性なしだった。

 また、いつも通りの毎日。美歩と過ごす時間はとっても楽しい。けど、やんぱり頭の隅にはあのことが引っかかっていた。
「直海!」
「え?」
「なにボーっとしてるの?」
「あ~、ごめん。なんでもないよ」
 
 美歩が旬君に告白したあの日から、わたしは久しく彼に会っていない。旬君が言った好きな人とは、私のことなのだろうか。確かに、前に告白されたけど、人の気持ちなんてそんなに長続きしないだろう。その時のわたしは、旬君のわたしに対する想いがどれだけ大きかったか気づくことはなかった。

「ただいま~」
「おかえり、直海。遅かったじゃない!」
「ごめん、美歩と買い物してたら遅くなっちゃった」
「旬君、ずっと待ってるわよ?」
「え?!」

「おかえり、直海ちゃん」
 旬君はわたしの部屋のベットの上でくつろいでいた。
「ただいま」
 わたしはこの後、旬君の心のうちを知ることになる。