今日はなんて暑い日なんだろう。体から汗が滝のように流れ出る。家まであと50メートルくらいのところまで来た。
 あぁ、あの角を曲がれば家につく。あと10歩、あと9歩、8歩、7歩、6歩……。なんか意識が朦朧としてきた。やばい……。
「キイィィ〜〜!!!」
 ドスっ!!鈍い音がした。体が痛い。さっきのキイィィって音、自転車ぽかった。あ〜、痛い。暑い。頭痛い…………。


「……ん……ここは………どこ?」
「気がつきましたか?良かったぁ。ここは病院ですよ。さっき僕があなたを自転車でぶつけてしまって………。本当に申し訳ありませんでした。」
「病院……そっかぁ、私倒れたんだ。」
「本当にすいません。」
「そんなに謝らないでください。私がボーっとしてたから自転車が来たにも気付けなかっただけですし……。」
「そりゃあ、ボーっとしていてもしかたないですよ。」
「え?」
「だってあなた、日射病で倒れたんですよ?」
「え!?日射病??私が?!」
「はい。でも、僕がぶつかったせいで、軽い脳震盪も同時に起こしてしまったみたいで、本当にすいませんでした。」
「脳震盪って……えぇ〜………」
「本当にごめんなさい………。」
「……え?でも、もしかしてここまで私を運んで来てくれたのってあなたですか?」
「あ……はい。」
「じゃあ、謝ることなじゃないですか。」
「え?」
「だってあなたは私をここまで運んでくれたってことは、あなたは私の命の恩人ってことでしょ?」
「……許してくれるんですか?」
「当たり前ですよ。」
「……優しいんですね………。」
「そんなことないです。私は逆にあなたにお礼を言わなくちゃいけませんよ。ありがとうございました。」
「……名前、名前を教えてください。俺の名前は久藤旬です。」
「私は寺島直海です。」
「直海さん、っていうか直海ちゃん」
 直海ちゃん…。昔、誰かにそう呼ばれていた気がする。
「はい?」
「俺、直海ちゃんのこと好き。付き合ってほしい」
「へ?」
これが私と旬との恋のはじまりでした。