耳元で彼の声が響く。
少し鼻にかかった低い声。

「心配してくれてありがとう。何でもないの。大丈夫」

「…でも…気になるよ」

抱きしめる腕に力が入ったのが分かる。

これじゃ体が保たない。

彼の体を押して自分から離れた。目の前にはさっきの体育の授業のジャージのまま立っている彼。

「授業遅れちゃうよ。私は大丈夫だから」

廊下に予鈴が鳴り響く。

私は良いけど彼に授業をサボらせるわけにはいかない。

着替えもするから急がないと間に合わなくなってしまう。