僕は君だけを見つめてる

ウォークマンを停止して彼の姿に見入っていた。

ヘッドホンをしているから周りの音は聞こえてこない。

グラウンドで走っている彼は本当に楽しそうだ。

朝マフラーに顔を埋めて寒そうにしていた彼と今走っている彼は全然見た目が違って見える。

眺めてるだけで何だか幸せな気分になる。


「まさか眺めてるだけで満足してる訳じゃないわよね?」

授業が終わって涼華から発せられた一言に黙り込んでしまう。

今は眺めてるだけで十分満足なんだけど。

ダメだと言わんばかりの涼華の視線。