「よしっ、着いたー!家は今誰もいないのかな?」
「うん、そうみたい。ありがとう、送ってくれて。」
「すぐ着替えて寝るんだよ!絵里子のお兄さんには透から連絡させるから!『俺は先輩の可愛い可愛い妹をいじめて傷付けました』って!」
「やめてくれよ!冗談抜きでぶん殴られるぜ!?」
「二人とも、気をつけて帰ってね?」
「何言ってんの絵里子!すぐそこだから気を付けるも何もないよっ!」
「そうそう、お前こそ階段から転げ落ちるんじゃねーぞ?」
「むうっ、またそうやって子供扱い…よしっ、じゃあまた明日ね。」
「うん!おやすみ、絵里子。」
あたしは送ってくれた二人に背を向けて玄関に入って行こうとした所でもう一度勇気を出した。
「…透くん。」
「ん?なぁに?」
「…あたしの事、呼び捨てにしてもいいよ。もう…恥ずかしくないから。」
「…分かった。お大事にな、絵里子。」
呼び止めてから玄関に入るまで、一度も後ろを振り返る事は出来なかった。恥ずかしくて…顔見られたくなかったんだもん。