「あ、そうそう、忘れるところだったわ。」
周りにいた女の子達も各々の教室へ帰り、あたしのクラスでもほとんどが席に着き終わった所に慌てる様に教室に戻ってきた秋風くんと、ボーッと頬杖をつきながら事の流れを見つめていたあたしはバッチリ目が合った。…あれ?あたしの事見てる?いや、きっとあたしの斜め後ろに座ってる子を見ているに違いない。現に斜め後ろに座る子、目がハートになっちゃってるじゃん。
全力ダッシュでここまで戻って来たのか、息を切らせて汗だくの秋風くんの顔はまたも笑顔だった。息が整った所で少し声を張った。
「おはよう、絵里子ちゃん」
チャイムの鳴る音、秋風くんが走り去って行く音、そして…あたしの心臓のドキッと言う音のハーモニーがくすぐったかった。