「花奏ー。シャーペン貸してくんねぇ?」

今日も早速やって来た…花奏の幼馴染みの秋風透くんだ。顔立ちといい、スタイルといい、どこにも文句のつけ様のない程完璧に整ったいわばイケメンだ。三学期初日から筆箱を忘れてやって来る彼の周りには数えきれない程の数の女の子がいる。
「透くんっ!私の貸すよっ!」
「私、赤ペンも持ってるよ!」
恐らく群がる女の子達の顔触れ的にそこには下の学年の子もいる様な…いわゆる学校の王子様的存在。
「なんで私が貸さなきゃいけないわけ!?て言うか筆箱くらいちゃんと持って来てよバカ!後女の子連れて来ないで!教室前塞がれて迷惑!」
あたしの前じゃ優しいお姉さんの花奏が鬼の様な面相で一気に言葉を言い放ち、その笑顔に向かってシャーペンを投げ付けた。おぉ…ナイスコントロール…今年のお花見の屋台でダーツやらせたい。
「あっぶねぇな!おいおい、俺キャッチ出来たから良かったけど他の女の子に当たったらどうすんだ!?」
「お前が連れてくんのがいけねぇんだろ!バカ!早く帰れ!」
秋風くんと話している時の花奏は最早口調すらいつもの花奏じゃなくなる。その度に思う。花奏を怒らせるのだけはやめようと…。
気が付いたら周りにいた同じクラスの女の子達も彼の元へ駆け寄って行ってしまい、今あたしは完全に孤独だ。そして一人思うのである。
「秋風くん…かっこいいなぁ…」