「本山さん!これ、ホワイトデーです!大した物じゃないんだけど…もらってくださいっ!」
「あはは…ありがとーっ…」
…本日、既に十五個目のお礼をもらった。この箱…恐らく近所のデパートの地下で売ってるなかなか高いお菓子屋さんの包みだろう。これと同じくらい高そうな包みのお礼を他に十四個ももらってしまったのだ。十円バー十五本…百五十円で五千円は買った事になりそうだ。
「海老で鯛を釣る…なんてねっ。」
「ちゃっかり上手い事言ってないでちょうだい!それにしても絵里子からもらう十円バーって…それだけで百円相当くらいの価値にはなるんじゃないのかな?」
花奏はあたしのもらったお礼をマジマジと見つめていた。
「皆十円バーくらいでマジになり過ぎだよー…あたし別にお礼が欲しかったんじゃないし、万が一くれるとするなら飴で良かったんだけどー…」
「やっぱり絵里子が配ったっていう事に価値があるんだよ!あたしも絵里子からもらった十円バー、大切にしてるんだから…♪」
花奏がなぜか急にうっとりし始めた。十円バーごときでこれだけの人を幸せにすることが出来たんだ。あたしは今後十円バーで世界を救って見せるよ…。