しばらくすると多くの人が前に出て行き始めた。皆お花を持っている。
「あれ…何してるの?」
「あれはね…棺の中にお花を入れているの。火葬する前に…ね?」
「へぇー…。」
高校三年生にしてこんな事も知らないとは…でもこれで透の顔を見れるのは最後だと言う事は分かる。
「…行きましょう?私達も…透に最後のお別れをしなきゃ。」
花奏がそう言って前に歩いて行ったので、後に着いて行く。周りにいる人達はあたしが透の彼女である事を知っているのか、涙の中に微笑ましさを見せてくる。皆ここにいるくらいなんだから透の親戚だったりそこそこの知り合いだったりするのだろう。あたしはその一人一人に頭を下げながら前に歩いて行く。
…透の遺影。これでもかという位に楽しそうな笑顔。…今目の前の棺に入れられている透にその面影は無く、静かに目を閉じている。…まるで今にも起き上がるんじゃないかってくらいに眠っているみたい。
「…透、あっちでも幸せにね?」
花奏はそう言って透の胸の近くに花を添えた。あたしも近くに用意されていた黄色い可愛いお花を選んで手に持つ。
「…貴女が最後なの。生前の彼と会話したのは。…そして貴女がお花を入れたら棺が閉められるの。最後に言葉をかけてあげて…出来たらキス、してあげて欲しいな…。」
花奏があたしを撫でながら優しくそう言う。普段ならここで「やだよ!恥ずかしいもん!」とか言っちゃうんだろうけど…今は恥ずかしいとは一つも思わなかった。言われなくてもやっていたと思う。