「透!久し振り!」
「絵理子…元気そうで何よりだ。」
病室には…元気な透はいなかった。弱々しく微笑む姿に心が凍り付きそう。
花奏によると、面会禁止はかなり前に解除されていたけど透がずっと拒否し続けたらしい。…花奏とあたしに死に目に会わせたくないと。それに耐えかねて今回あたしとの面会を希望したと言う。花奏は…最後顔を見ると辛くなるから、と会いたがらない様だ。
「花奏は…いいの?会わなくて。」
「いいのいいの。私も…弱々しくなってる透は見たくないから。」
幼馴染みにもなるとお互い考えている事が一致するのだろうか…長年の付き合いって凄いなぁ。
「お願い絵理子。いつも通り…何も気を遣わないで透と話して来て?透もきっとそれを望んでいるはずだから…。」

…という訳で、辛いけど…空元気だけど…明るく振る舞う事にした。久し振りに会えたのが嬉しいのは本当だから、素直に喜ぶ事ができる。
「ははっ、こんな姿…みっともねぇ。」
「そんな事ないよーっ!病気と闘ってる…今の透、かっこいいよっ!」
「そんな事言ってくれるの…絵理子だけだわ。」
透はそう言って力なく手を差し伸べてくる。あたしはベッドの側まで行って、その手を優しく握った。
「…頑張って。透なら病気、治せるから。…元気になったらまたデートしよう?」
「ははっ、ありがとな…絵理子は俺の心の支えだわ。」
そう言うと…今までで一番優しく、ゆっくりと頭を撫でてくれた。目から一筋涙が流れていたから、それを拭ってあげる。
「…また会いたくなったら連絡して?いつでも来るから。」
「ああ…ありがとな。また明日…呼ぶかも。」
あたしはその言葉に笑顔で返し、透の病室を後にした。

…これがあたしと透の、最期の会話となりました。