「…じゃあ一つだけ聞いてもいいか?」
透はそう言うと身体を起こし、あたしの目を見つめた。たまに見せる真剣な表情…まさにそのものだ。あたしもその真剣さに応えて大きく頷く。
「…俺が金持ちじゃなくても俺を好きになってくれていたか?」
…何言ってるの?あたしがお金目当てで透と付き合ってる?そんなバカな。
「…あたしはお金持ちだから透を好きになったんじゃなくて、好きになった透がお金持ちだったんだよ。」
「くっそ…やっぱり絵理子最高だわ。」
透はあたしを抱き締めた。泣いているのか、肩の辺りが少し湿っぽい。
「また泣かされちまったわ俺…情けねぇ。」
「…泣いて、良いんだよ。」
あたしは透の背中をそっと撫でた。お父さんやお母さん…たまにお兄ちゃんは、あたしが落ち込んでいる時や甘えたい時、いつもこうやってあたしの背中を撫でてくれる。それはあたしをすごく安心させてくれるし、愛のこもった物だと思う。…透も少しはこれで安心してくれるといいな。あたしの愛…伝わるといいな。
「絵理子…俺お前の事どうしてこんなに好きなのか分かんねぇ…。」
「そんな事あたしに聞かれても…。」
「どこにも行くなよ?ずっと俺の側にいろよ?」
透の腕に力が篭るのが分かった。…そんな事しなくてもあたしは逃げないのに。
「大丈夫…ずっと透の隣にいるから。」
背中を撫でていた手で今度は頭を撫でてあげる。…まるで、本当にお母さんになったみたいに。
しばらくすると、透は安心したのかいつもの笑顔に戻り、あたしにこう言った。
「…っし、行くか!俺の家!」
自転車の元に走っていく透を見て、あたしも安心して自然と表情が緩んだ。

