世界一遠距離恋愛

「…透、そろそろ下ろしてよ。」
「バーカ。お前が元気そうに走ってる所見られたらどうすんだよ。」
「この状態見られる方が嫌だもん!恥ずかしい!」
「ははっ、そうやって照れる絵里子も可愛いよ。」
「うっ、うるさい!」
仮病を使って飛び出して来たあたし達は玄関へと向かっている。…我ながら腹痛の演技は女優レベルだと思ってみる。しかしこの罪悪感…次のテスト数学でいい点数取らなきゃ。
「しっかし絵里子ってマジで腹痛そうに演技するな。俺本気で心配しかけたわ。」
「まっ…まぁね。上手くいかせる為にちょっと頑張っちゃった。」
「今度ガチで腹痛かったら言えよ?病院連れてくから。」
「知ってた?あたしの胃袋丈夫だからお腹痛くなる事なんかないんだから。」
「うるせぇな。体何気に弱いくせに。」
「透より丈夫ですぅー。」
「ははっ…どうだか。」
結局玄関までお姫様抱っこされたままだったあたし。とりあえずは誰にも会わなかったから良いけどさ。
「…っし、乗れ。」
透はあたしを下ろすと自転車に乗る様に催促してくる。普段歩いて学校に来ているが、今日の為に自転車を用意したらしい。家に行く前に少し寄りたい所があるとか言ってたし…。
「おっ、乗れたか?スカート捲れない様にな?」
「余計なお世話ですっ。」
「っし…んじゃ行きますかぁっ。二人乗り…許してくれよ先生。」
そう言って自転車に飛び乗る様に座る透。制服のネクタイを緩める姿に…不覚にもドキッとしてしまう。
「しっかり掴まれよ…っ!」
「ちょっ…もっとゆっくり発進してよ!」
自転車の二人乗りなんてした事がないあたしは怖くて透の背中にギュッと掴まる。…こうしてあたし達の多分最初で最後になってしまうデートが始まった。…いや、余命なんて関係ないんだもん。これからも何回だってするんだからっ!