「…関係ないでしょ?」
「ん?何がだ?」
「余命なんて…関係ないでしょ?後三ヶ月で死ぬかもしれないんでしょ?…逆に死なないかもしれないって可能性もあるじゃん?死ぬ可能性考える方がおかしいよ。…透は三ヶ月経っても、半年経っても…十年経っても生きてる。あたしはそう信じてるから。」
「絵里子…お前って奴は…。」
透は笑いながら涙を流した。透の笑った顔は何回も見て来たし、弱った顔だって入院してから何回も見ている。だけど涙を見たのは初めてだ。
「俺…花奏以外に泣いてる所見せたことねぇのに…ったく、泣かせやがって。」
「やだもう…泣かないでよ。」
今度はあたしが透の目から流れる涙を拭う。
「くっそ…男泣きとか情けねぇ…。」
「情けなくなんかないよ。あたしはそんな事で透の事を嫌いにはならないから。」
「あぁもう…大好きだわ、絵里子…。」
透はあたしの手の上にそっと自分の手を添えて来た。なおも涙の止まらない透の姿にあたしの目からも再び涙が零れる。
「こんな小さい手して…ったく、可愛いなぁホント…。」
「やめてよ…こんな時に照れさせないで。」
「いいだろ?俺ら恋人同士なんだぜ?…なぁ、俺今何したいかって分かる?」
「…何となく。そしてあたしも同じ事がしたい。」
「ははっ…照れ屋のくせにやけに積極的だな。」
「うるさいなぁ…してあげないよ?」
「嘘だって。…ほら、来いよ。」
「うん…。」
あたしは透の広げる腕の中にそっと身を寄せ、しょっぱい味のキスをした。泣いていたせいかすぐに息苦しくなったけど関係ない。透の気が済むまでやらせてあげる。時々透の頭や背中を撫でてあげて…抱き締め合うのもキスするのも久し振りだから、これで少しでも安心してくれる様に…。