世界一遠距離恋愛

「んじゃ、私達帰るから。お大事にね。」
「…これがお大事にの態度か…?」
透は左頬を押さえながら半泣きで言う。…花奏お決まりの右平手のおかげで透は左頬が膨らんでいた。あちゃー…痛そー…。
「ねぇねぇ、明日も来てもいいー?」
「おう、来い来い。どうせ暇だしよ。」
「はっ、午前中倒れといて何が暇だって?」
「おまっ!なぜそれを!?」
「えっ!透倒れたの!?」
「そうだよ絵里子!このバカ言う事聞かないで酸素マスク外してたせいで今日の午前中ぶっ倒れたんだよ!」
「だって酸素マスクダリィじゃん。ダセェし。」
「病人にダルいもダサいもありませんっ!…絵里子、貴女の口から透にちゃんと酸素マスク着けるように言ってくれない?」
「あたしが?」
確かに透が具合悪いのに尚更悪化させるのは良くない。ちゃんと言わないと…。
「はっ、絵里子に頼まれた所で俺の気持ちは変わんねぇよ。誰があんなもん着けるかよ。」
「…ねぇ、透。お医者さんや看護師さんの言う事はちゃーんと聞かなきゃダメだよ?酸素マスク着けろって言われたなら着ける!何か薬飲めって言われたなら飲む!そうしないと具合悪くなるばかりだよ?」
「…よし、着ける。」
嘘ぉぉぉぉっ!?何この気持ちの移り変わり様!?
「なんて単純なんだこの男は…。」
「絵里子が言うんだしな。言う事聞かねぇと。」
「数秒前に意気込んだセリフ録音しとけば良かった…!」
悔しがる花奏を他所に、透は屈んであたしを撫でた。
「心配すんな。ちゃんと快復に向けて努力すっから。」
「うん。頑張ってね。」
「退院したらデートしような。」
「うん!する!」
「ははっ。じゃ、勉強も頑張れよ。」
「…っ!ちょっ、玄関先でまでキスしないでよ!」
「一瞬だろ?誰も見ちゃいねぇよ。」
「…あのー、見てるんですけどー。」
「あれっ、花奏。いつの間にそこにいたの?」
「…歯、食いしばって?」