「…俺、最近あのくらい小さな子を見ると絵里子みたいだなぁって思うんだ。」
「ちょっと!それあたしの事子供扱いするとどめだよね!?」
「あははっ、違うって。半分そうだけど。」
「もーっ…。」
わざとらしくむくれて見せると、黙って携帯のカメラ機能を起動させ始めたのでやめた。もう何をしても無駄なんだな…透くんの前では。
「…俺、あのくらい小さい子みたいに素直で純粋な絵里子が好きなんだ。もう半分の意味はそういう事だよ。」
そう言うとさっきの女の子にするみたいにあたしの目線に合わせて屈んでお兄さんぶっていた。…透くんのこういう所は少しムカつく様で好きだったりする。
「俺は手術で死んだりなんかしないからさ。絵里子は成功を信じてくれるだけでいいから、な?」
「…分かった。頑張ってね。」
あたしはそう言っていつもとは逆に透くんの頭を撫でてあげた。…この頭の向こう側に潜む脳の病気が少しでも減る様に精一杯思いを込めて。
「…俺らも、帰ろっか。」
「そうだね。」
「…抱っこしてもいい?」
「絶対だめ!」
空はすっかり暗くなっていて、星も出ていた。ライトアップされた桜がくっきりと輪郭を見せる。…この桜を、来年もまた透くんと見れたら良いのにな。