「あー惜しい! あと一問間違わなきゃ満点だったのに!」

「相変わらずすごい成績ですね」

この広い校内にただ一人の友達、藤岡涼夏はひどく残念そうに叫んだ。

彼女が持っているのは一学期の期末テスト。そこには堂々と98点と書かれている。

「今の保健体育で最後ですよね。今回も赤点ないみたいでよかったです」

私の持つ解答用紙には全て60点前後の数字が書かれている。
私が通う南田高校では35点未満を赤点としているから、余裕で回避できたみたいだ。
成績的には中の中くらいだけど。


「…ふっふっふっ」

藤岡さんと話していると、長身の男子が得意げな顔で、私の目の前で笑い出した。
瀬戸くんだ。気味が悪い。

「何か用ですか?」

「テスト前の約束、覚えてる?」

「……?」

約束? そんなことしたっけ?

「もしかして忘れたの!?
ほら、賭けしたじゃん! 期末テストでどれか一教科でも俺がミヤちゃんに勝ったらひとつだけお願い聞いてもらえるってやつだよ!」

「……。
あー、あぁ、思い出しました。
たしか、君が勝てなかったら、私の半径5mに近寄らないってお願いが叶うはずのやつですよね」

言われてみれば、そんな約束をした気もする。

「思い出してもらえてよかったぁ」

瀬戸くんはほっとした顔になる。
そして一枚の紙を私の目の前に突きつけてきた。

それを見た私と藤岡さんは、開いた口が塞がらなかった。

……まさか、そんな!