「託実、怒っているとかそう言うことじゃないの。
託実が誰かを好きになるっていうなら、
それは誰も反対なんて出来ないわ。
此処に居るメンバーは、
貴方と理佳ちゃんが過ごした時間を知るものしかいないもの。
貴方が新しい時間を動き出したいと望むなら、
私は託実を全力で守るわ。
そうやって高臣さまとも話をしたの。
それに……裕お兄様や、此処にはいないけど裕真とも。
だから託実の気持ちを聞かせてちょぅだい」
そう言って切り出された話し合い。
「託実、託実が彼女に惹かれたのは何時?」
「彼女がLIVEハウスに来てくれる頃から、
よく目が行ってた。
特に意識するようになったのは今年になってから」
「そう。
今年になってから、特に意識するようになったきっかけは何?」
裕兄さんにそう問われた途端、
思わず言葉に詰まる。
『……彼女の姿が理佳と重なったから……』
そうやって浮かび上がった言葉を飲み込んで
俺は黙る。
「託実が言いにくそうだから私が答えようか……。
彼女、喜多川百花さんが満永理佳さんに面差しが良く似ているから。
託実が惹かれる理由はそれじゃないのかな?
先日、彼女の友達が病院に入院した時に一度だけ会話を交わしたけど、
その時に私も驚いたよ。
彼女が見せる表情のところどころに、理佳ちゃんの面影が感じられたから。
それは……宗成叔父さん。
託実のお父さんも感じたみたいだった。
そうやって叔父さんが裕真に話したそうだよ」
突きつけるられるように、見透かされるように告げられた言葉に
俺は息苦しさを覚える。
「託実を追い詰めるつもりじゃないし、責めるつもりもない。
それは今しがた、宝珠が話した通りだよ。
ほらっ、ゆっくりと息を吐き出すと、自然と空気が吸えるよ」
何時の間にかソファーから立ち上がって、
俺の傍で……誘導するようにゆっくりと呼吸をはじめる裕兄さん。
暫くの時間の後、息苦しさから解放されると
高臣社長が、自家製のハーブティーをテーブルへと置く。
ティーカップに手を伸ばして、
一息つくと、俺は自由になった呼吸でゆっくりと深呼吸を一つ続けた。