「あっ、この場所には大切な人が眠ってるんです。
託実さんは?」
そうやって逆に問いかけられた質問に俺も、
彼女と同じように「大切な人が眠っている」のだと答えて
墓地の駐車場を後にした。
百花ちゃんの車を見送って、
俺は理佳が眠る場所へとゆっくりと足を進める。
理佳は……今のような俺に、
なんて言うだろう。
ただ少し弱っている俺自身に、
起爆剤が欲しくて、
アイツの声を求め続ける。
惹かれていく心に
罪悪感が芽生えていく……。
そのまま時間だけが過ぎて、
夜になると、伊舎堂の別荘へと足を向ける。
その場所は海が見たいと願った理佳と最初で最後の旅行に来た場所。
車を停めてプライベートビーチに向かうと、
その砂浜にゴロリと横になって空を見上げた。
理佳の死を受け止めたフリをしながら、
目を背け続けようとしていた俺自身。
その逃げ場所に、
百花ちゃんに惹かれていく俺。
俺も雪貴のことを
言える立場じゃないな。
道化気味に紡ぐ言葉。
波の子守唄に体を委ねるように
ゆったりと砂浜の上、寝転んで力を抜く。
見上げた満天の星空と波の鼓動。
目を閉じると理佳と百花ちゃんが
俺の名を紡ぐ声が響いた。
……惹かれていく……



