星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】




「裕真兄も、裕兄に使われて大変だ」

「好きなように言うといいよ。

 私も出掛けるついでだから空港まで送るよ。
 
 雪貴君を呼んでおいで。
 
 下に車、まわしておくから」



そう言うと裕兄は病室を先に出て行く。



俺は雪貴に連絡をして合流すると
兄さんの車でファンの待つ空港へ向かった。


今から俺は亀城託実ではなくて、
Ansyalの託実。


Ansyalの託実として、
最高の時間をフロデュースする。



気になり続ける百花ちゃんの存在に、
理佳への罪悪感。


その2つの心の中、天秤にかけて
理佳への罪悪感に蓋をする。



今は……この時間を楽しむために。




空港へと滑り込んだ車から降りて、
俺たちはメンバーやスタッフと合流。


「おはようございます」

「おはようございます」


スタッフ間で挨拶を交わしていると、
すでに空港入りしてた他のメンバーも姿を見せる。

メンバーが揃うと、瞬時に気持ちが切り替わる。


「今日から旅行期間、宜しくお願いします」


リーダーとしてスタッフに声をかけると、
それぞれが挨拶を返してくる。


「じゃ、早速だけど今日最初のファンサービス行くわよ」

「お願いします」


藤堂実夜の声の後、
メンバー全員でフライト前の搭乗ゲート。



搭乗ゲート前には、警備員も配置されて大賑わい。



本日、初めての顔見世。
旅行最初のファン交流。


集まってくるファンたちに託実として、
笑顔を振りまき今の時間を楽しいものへと
プロデュースしていく。


それも持て成す俺たちの役割。


そんなファンたちの輪の中、俺は彼女を探し続ける。