広い世界に憧れた理佳の願いを
叶えてやりたい。
アイツが、いつも天(そら)から
応援してくれてる。
Ansyalを守り続けることで
俺も……理佳を感じ続けられる気がして。
だから……守りたかった。
「……隆雪……」
その俺の想いを、
一番傍で感じてくれてたのは
親友、隆雪以外だから。
ふいに扉を叩く音が響いて、
俺はドアの方に視線を向ける。
ゆっくりとした足取りで入室してきたのは、
私服姿の裕兄さん。
俺のもう一人の従兄弟で、
裕真兄さんの兄貴。
裕兄さんはゆっくりと
隆雪のベッドサイドまで近づいてくると、
アイツの生存を告げるモニターのデーターに視線を向けて
すぐに俺に向き直った。
「託実、これも持っていくといいよ」
そう言って手渡されたのは、
処方箋で出された薬の入った封筒。
「これ……」
「今日から香港でしょ。
予定が何も入ってなければ裕真に押し付けて同行するんだけど、
生憎ロンドンに出掛けないといけない。
その為の保険だよ」
静かな口調で紡ぐ兄さんに対して俺も頷く。
「心配性」
照れくさくて小さく呟くように告げる俺自身。



