言葉少なで
殆ど自分のことを語らない。
だが……ずっとアイツを見ているからこそ気がつく。
アイツの心の悲鳴。
壊れそうになる心を必死に支えながら
隆雪のTakaであり続けようとしてる。
その中でアイツは
自分自身も見失いつつある。
それをただ黙って見続けるだけの空間が、
どれだけキツイかわかってんのか?雪貴。
喉元まで出そうになる言葉が
アイツにとってナイフになるのを知ってる俺には
その一歩が踏み込めない。
今の関係が崩れていくのは避けたい。
そう思う心もまた真実で。
ただ一つ思うのは、
雪貴の心が悲鳴をあげている現状を知りながら、
俺たちはAnsyalの為に、
アイツを束縛し続けてる。
「……隆雪……」
眠り続ける親友に小さな声で
吐き出すように名前を紡ぐ。
今も隆雪の声は聞こえない。
「お前から預かり続けてるAnsyal。
俺には……大きすぎるぞ。
早く目を覚ませよ。
そしたら、俺は肩の荷を降ろして
気楽にAnsyalを感じれる」
そう言いながら、
細くなった親友の腕に触れる。
隆雪が倒れたあの日から流れに任せるように俺が
Ansyalのリーダーを代行する立場になった。
隆雪と共にAnsyalを
最初に動かしたから。
だから……雪貴の気持ちもわかる。
俺も雪貴とは違う意味で
アイツの居場所を守りたかったんだ。
それにAnsyalは理佳の告別式でも、
旅立ちを見送った大切なバンドだから。
理佳自身も、応援してくれた
俺たちの大切なバンド。
あの時、旅立つ理佳に誓った。
俺はこのバンドで
最高の相棒と世界に飛び立つ。



