入院してる友達は、
どんな人なんだろう?



男の人?

女の人?





それとも……彼女だけど、それをファンには言えなくて
友達って言葉で誤魔化したの?






こんな風に、託実のプライベートを詮索してしまう私は
物凄く醜いと思う。


だけど……そんな、嫉妬にも似た感情が
沢山、私の中から湧き上がって来てる。



燻る【くすぶる】のが嫌になって、
私は再度、体を起こすと
予備に持ってきた缶チューハイに手を伸ばす。


プルタブに手をかけて開けると、
口元に運んで、一気に流し込む。


流し込んで一息ついた私の視線に止まったのは、
Ansyalの会報。



A4サイズの封筒の中に入った一冊の本。




その中には、メンバーの集合写真。
それぞれのピン写真。

そして……各メンバーの部屋と称される、コーナーやインタビュー。
Liveレポートとか、アルバム制作秘話などファンには嬉しい情報が
惜しみなく詰め込まれてる。




その頁を次から次へと捲っていた指がピタリと止まったのは、
後半の頁に差し掛かった頃。





Ansyal FC旅行IN香港 開催決定。



旅行内容

・メンバーと合同で香港見学
 【あなたのバスにメンバーが乗り込みます】

・ミニライブ

・香港ディズニー内にて、イベントを計画。



イベントでのプレゼントには、
メンバーとの100万ドルの夜景デート件。

その他、豪華プレゼント計画中。



今宵、Ansyalと
100万ドルの夜景を見れるのは誰か?


お申し込みはこちら。
ansyal_fcinfo_@xxx.com








そんな煽り文句の見出しが、
香港の100ドルの夜景写真を使いながら
デカデカと掲載されていた。




あっそっかー。


後、2か月で8月。

恒例行事の、
FC旅行の時期だったんだ……。




学生のファンでも参加できるようにと
調節された、夏休み期間の行われるFC旅行。



だけど社会人になった今では、
昔嬉しかった、そんな気遣いも無用の産物。



仕事どんなスケジュールだったかな。


今年は香港なんだなー、
海外なんて初めての試みだよね。


そんなことを考えながら、
のそのそと床を移動して、鞄の中から
お気に入りの手帳を取り出す。



8月頁を見て、睨めっこ。



次の日、お祖父ちゃんに休みが貰えたら
行ける。