全ての機材側の準備が整うと、
Ansyalとしてのステージ衣装に袖を通し、
20時半の出番を待つのみとなっても、
雪貴はまだ会場入りしない。
「あれっ?
託実、Takaまだ来てなくね?」
十夜の声に周囲を見渡す。
「アイツ、
どうしたんだろう」
祈が心配したように呟く。
誰かが時間になっても来ない。
それは……隆雪の一件を経験した俺たちには、
誰にも不安が過るわけで……。
「悪い、何かあったらここの対応頼む。
雪貴を見てくるよ」
ステージ衣装の上から、
重ねるように、スタッフコートを羽織ると
俺は階段を上って、地上へと姿を見せる。
すでに開場してLIVEが始まっているにも関わらず、
何処から情報が漏れたのか、俺たちAnsyalのファンらしき子たちが
LIVEハウス周辺に集まりだしていた。
そんなファンたちに嬉しさを覚えながら、
視線を向けた先には心配していた雪貴の姿。
*
遅いんだよ、お前は。
心配するだろうが、隆雪の時みたいに。
*
雪貴の姿を見て毒づきながら、
アイツの姿を確認して安堵する俺がここにいる。
『雪貴』
思わず声に出しそうになる
言葉を必死に飲み込む。
ここに到着して、
出迎えればいいだろう。
そう思い、少し壁際に隠れる様に
身を潜めた俺の視線に止まる光景。
おいおいっ……。
お前、誰と話してんだ?
そいつTakaのファンじゃねぇか?
確か、唯香ちゃんだったか。
唯香ちゃんの姿を見つけた途端、渡したチケットを無駄にせずに、
百花ちゃんが来てくれたのかもしれないと期待する俺自身。
まだ姿の見えない里佳の面影を感じさせる
百花を思い起こして、
俺の鼓動が、ドクンっと力強い高鳴りを見せる。
だがそんな、俺の高鳴りとは別に
目の前で繰り広げられるシーンは、
安心出来るものではない。



