全ての機材側の準備が整うと、
Ansyalとしてのステージ衣装に袖を通し、
20時半の出番を待つのみとなっても、
雪貴はまだ会場入りしない。



「あれっ?
 託実、Takaまだ来てなくね?」


十夜の声に周囲を見渡す。


「アイツ、
 どうしたんだろう」


祈が心配したように呟く。




誰かが時間になっても来ない。


それは……隆雪の一件を経験した俺たちには、
誰にも不安が過るわけで……。



「悪い、何かあったらここの対応頼む。
 雪貴を見てくるよ」



ステージ衣装の上から、
重ねるように、スタッフコートを羽織ると
俺は階段を上って、地上へと姿を見せる。



すでに開場してLIVEが始まっているにも関わらず、
何処から情報が漏れたのか、俺たちAnsyalのファンらしき子たちが
LIVEハウス周辺に集まりだしていた。

そんなファンたちに嬉しさを覚えながら、
視線を向けた先には心配していた雪貴の姿。






遅いんだよ、お前は。

心配するだろうが、隆雪の時みたいに。





雪貴の姿を見て毒づきながら、
アイツの姿を確認して安堵する俺がここにいる。



『雪貴』



思わず声に出しそうになる
言葉を必死に飲み込む。


ここに到着して、
出迎えればいいだろう。



そう思い、少し壁際に隠れる様に
身を潜めた俺の視線に止まる光景。



おいおいっ……。



お前、誰と話してんだ?



そいつTakaのファンじゃねぇか?

確か、唯香ちゃんだったか。




唯香ちゃんの姿を見つけた途端、渡したチケットを無駄にせずに、
百花ちゃんが来てくれたのかもしれないと期待する俺自身。


まだ姿の見えない里佳の面影を感じさせる
百花を思い起こして、
俺の鼓動が、ドクンっと力強い高鳴りを見せる。



だがそんな、俺の高鳴りとは別に
目の前で繰り広げられるシーンは、
安心出来るものではない。