「あれっ、託実さん。
来てくれてたんですね」
「まぁな。
百花と満月はまだ朝は寒いから、休んで貰ってるけどな」
「おはようございます。
託実さん」
「おはよう、唯香ちゃん」
隆雪のお墓の前、出逢う雪貴と唯香ちゃん。
二人は、手にしてきた花束を素早く花筒にセットしていく。
「なんや皆、朝早すぎるやろ」
そんなことを言いながら姿を見せるのは、十夜。
十夜の後ろには、荷物を持った憲が控える。
「おはよう、十夜・憲」
「おはようございます。
僕だけだと思ったのに、皆さん考えることは同じなんですね」
最後に姿を見せたのは祈。
宮向井家のお墓の前、
十夜がいつもの様にアイテムを並べて、シェーカーを操る。
水色の液体がグラスに注がれて、
隆雪の眠る前へと供えられる。
「あぁ、他のメンバーはアルコールなしな」
そう言いながら次から次へとノンアルカクテルをグラスに作り続けると、
その場でグラスを手に持って、墓石を囲むように半円に立つ。
「兄貴、遅くなったけど今日から兄貴がずっと大切にしてきたAnsyal
もう一度、始動させるよ」
「あぁ、待たせたな隆雪。
今日からまた一緒に行こうな。
んじゃ、第二期Ansyalに乾杯」
一斉に乾杯コールをしてグラスを飲み干すと、
憲が空になったグラスを鞄の中へと次々と片付けた。
んじゃ、次は会場で。
早々にお墓の前で解散して、俺は一度自宅に戻ると
百花と満月、理佳の写真を手にして再び移動する。
スタジオの方で軽く音を出してウォームアップを終えてから、
会場へと向かう。
まだ開演まで何時間もあると言うのに、
すでにコスプレ姿のファンたちが、会場周辺には集まってきている。
そんな中会場入りをして、リハーサル。
メンバーと相談しあった、セットリストを追いかけるように
第一部、第二部の演出を念入りに打ち合わせていく。
第一部は、隆雪を中心としていた懐かしいAnsyalとして。
雪貴も、隆雪の演奏の仕方を辿る形で隆雪を意識して音作りをしてくれる。
少し休憩を挟んで、アンコールの後から始まるのは新生Ansyal。