浮かんだフレーズを紙に書いては斜線をひっぱって消す。

そんな作業を何度も何度も繰り返しながら、
私の時間は1日、1日と過ぎていく。


年明けを迎えて、1月下旬。
いよいよ、雪貴くんは卒業試験の準備に入っていく。


そんなある日、唯香がふらりと私のマンションを訪ねてきた。



いつも一緒に居る、雪貴くんの存在は後ろにはない。



「いらっしゃい、唯香。
 どうぞ」



招き入れた私は、唯香に紅茶を出して
リビングのソファーへと座る。


部屋に流れるのは、練習の時に録音させて貰った
Ansyal版のお姉ちゃんの曲たちの仮音源。



「あっ、ごめん。
 作詞、頑張ってたんだ」

「あっ、気にしないで。
 作詞の方は昨日、最終的に十夜さんとも相談しながら完成して渡した後なんだ。

 完成して渡した後なんだけど、なんだか落ち着かなくて。
 本当にあんな感じで良かったのかなーって。

 それで……録音してた仮音源、また聞いてた」

「そっか。
 百花も大役果たせたんだ。

 今回は、百花凄いよね。
 ジャケットも百花の絵画とデザインでしょ。

 私も頑張んなきゃ」



そう言って唯香は、ティーカップを口元に運んだ。


「なんかあった?」

「ううん。

 何があったわけじゃないんだけど、
 私ももっと雪貴を近くで支えたいなーって思ったの。

 私、Ansyalの事務所のスタッフとして手伝えないかなって
 ちょっと考えてる」



突然の唯香の宣言に私は思わず、唯香を見つめ返す。