「仕事だよね、唯香」
「うん。
でも今、部活終わったから」
「あのさ……、どうしよう」
「どうしようって、何が?」
「唯香、陽性だったの。
妊娠チェックしたら、
陽性だったのよ」
電話の向こうの唯香の沈黙が重い。
「唯?
唯香?」
溜まらなくなって呼びかけてみる。
「妊娠って、病院は?
託実さんは?」
「託実は今、スタジオ。
プロデューサーとして活発だから」
「なるほどね。
わかった、今日はもう仕事あがれるから
今から付き添うよ。
病院、行ってちゃんと
確認して貰う方がいいでしょ」
「うん。
だったら今から
車で校門まで迎えに行くよ」
唯香との電話を切って、身支度を整えると
愛車に乗って、学院へと車を走らせた。
学校の門の前で待ってくれてた唯香と合流して向かったのは
大学病院。
大学病院に入ってすぐに、裕先生か裕真先生と連絡を取ろうと
唯香は動いてくれる。
受付で私の名前を出した後、受付スタッフはすぐに最上階へと繋いでくれた。
最上階の部屋には、何かを打ち合わせしていたのか
裕先生と裕真先生の姿があって、
二人は私の姿を見た途端に、優しく招き入れてくれた。
「百花ちゃん、行こうか」
唯香を裕先生の元に残して、私は裕真先生の後をついて
関係者専用の診察室へと案内される。
そこにはすでに、裕真先生から手配された産婦人科の先生が待機していて
そのまま診察。
妊娠検査薬の反応が間違いでなかったことが明らかになった。
託実の赤ちゃんが出来たこと。
それは凄く嬉しいし、
この時期に宿った赤ちゃんが、なんだか理佳姉の生まれ変わりのようにも思えて
そっとお腹に手を当てる。
「百花ちゃん、妊娠おめでとうでいんだよね」
確認するように裕真先生が言葉を発する。