「お疲れ様です」

「お疲れ様」



楽屋に戻った途端、関係者から声がかかる。


スタッフたちが会場の撤収作業を始めてくれる中、
俺たちは着替えを済ませて、スタッフたちの撤収作業に加わる。


メンバーそれぞれが着替えを済ませて、
それぞれの成すべき役割を成して、
トラックに詰め込んだ後、
俺たち五人は、スタッフと共に打ち上げへと向かった。


トラックは一足先に、
他のスタッフの手によって事務所へ。


俺たちは別のバスに乗り込んで、
いつもの会場へと雪崩れ込んだ。


打ち上げが終わったのは、
終電がギリギリ残る時間。


メンバー内のTakaこと雪貴が
まだ高校一年生ってのもあって、
これでも早めに切り上げられた打ち上げだった。


俺はタクシーを捕まえて、
まずは雪貴をマンションまで送り届ける。



「託実さん、お疲れ様でした。
 お休みなさい」



マンションの前、そうやって律儀にお辞儀をすると
事務所名義の建物の中に入室していく。


中まで入ったのを見届けて、
俺は一人、夜道を歩き出した。



雪貴が入っていったマンションの近くに、
俺が寝泊まりしている自宅もあるのだが、
今は家に帰る気がしなかった。


夜道を風を感じながら、
ひたすら歩き続けて辿り着いたのは忘れられない場所。



本家Takaの名を持つ、
俺の親友であり、雪貴の兄でもある隆雪が
入院する病院であり、父方の従兄弟、伊舎堂裕真【いさどう ゆうま】が総帥として
仕切る病院。


裕真兄さんを支える立場として、その役割を担っているのは、
兄さんたちのお父さんである政成【まさなり】伯父さんと、恋華【このは】おばさん。
そして俺の両親である、父の宗成【むねなり】と薫子【かおるこ】。


その巨大な建物の外観を目にとめると、
勝手知ったる関係者入口のドアから内へと侵入する。



「託実君。今日は遅いね」

「すいません。
 夜分にお邪魔します」


警備の人に声をかけて、名前と入室時間を記入すると
静まり返った病院内を歩いていく。


真っ暗な廊下に響いていく足音。
階段をのぼり、通い慣れた道を歩いていく。


そして目的の病室の扉を開けた。


ここに眠っているのは、
幼稚園の頃に出逢った親友。


そして……夢を失くした俺に、
夢をくれた大切な存在。