そんな部屋の洋服たちを見つめると、
私の好みかどうかは別として、
私の存在が受け入れられているのは実感できる。




その日……眠れなくなる自分自身を自覚して、
意識を手放すように、市販の睡眠薬を口に含んだ。





翌日、まだ残る薬の副作用。

気怠さと疲労感が私を包み込む。




「百花、起きた?
 お祖父ちゃんの画廊に仕事に行かなくていいの?」


そう言いながら入り込んでくるお母さん。


「ごめん……今日は無理みたい。
 体が動かない……」


ようやくの思いでそれだけ告げると、
再び私はベッドに体を預けた。


次に起きた時、お祖父ちゃんに携帯から連絡して
暫く休ませてほしいと伝える。




私が好きな託実は、
お姉ちゃんの恋人でした。




社会人としては甘えてるって言うのはわかってる。


だけど……今の私は、
何をする気にもなれないから。




満永の私の部屋に引き籠って、
カーテンも閉め切って、ベッドで眠りを貪る。



そして両親が出かけて居なくなったら、
私は……ふらふらと、
お姉ちゃんの部屋と教えられたその場所に彷徨う。





お姉ちゃんの部屋と教えられたその場所には、
私の知らないお姉ちゃんの病室での写真が
コルクボードや写真縦に収められていた。



グランドピアノの譜面立てところに飾られているのは、
病院のピアノを演奏しているお姉ちゃん。



コルクボードに飾られている写真は、
あっ……この人、夏に唯香を最初に助けてくれた人……。


記憶を掠める顔を見つけて、
その写真立てに手を伸ばしてフレームから取り出す。







20××年4月

理佳の病室にて。
主治医の亀城宗成先生と






亀城?
この苗字って……託実と同じ……。




ふいに玄関の扉がカチャリと開く。




「ただいまー。百花?」




私の名を呼びながらあがってくるお母さんは、
開けっ放しになってる、お姉ちゃんの部屋へと姿を見せた。