そんな俺たちを襲い掛かったのは、俺たちが20歳の聖夜。


Ansyalのデビュー1周年の節目のLIVE当日。

待ち合わせ時間になっても、アイツは来なかった。

他のメンバーには告げることはなかったけど、
親友の俺だけが知ってたアイツの秘密、脳腫瘍の発症。

珍しく雪が降り積もったその日も、
大学病院で治療を受けてから合流するはずだった。

開演時間が近づいても、隆雪が来ない現状では始めることも出来ず、
スタッフ内に不穏な空気が漂っていたそんな矢先
一本の電話が、隆雪の交通事故を告げた。


隆雪は事故で、父さんたちの大学病院に搬送。

すぐにでも親友の元に駆けつけたかったけど、
会場にはすでにファンが大勢来てくれていて、
4人でもいいから、やり遂げようかと話が出始めた頃
アイツの弟は俺たちにこういった。


『託実さん。 
 俺……まだまだだけど、Ansyalの曲なら、弾けるよ。

 兄貴の傍でずって、見てきたし俺も触ってきたから。

 兄貴、今……手術してるって父さんから電話貰った。

 だけど……このクリスマスLIVE、兄貴が凄く楽しみにしてたのも
 俺、知ってる。

 だから兄貴が戻るまで、Takaさせてよ。

 兄貴が帰る場所、俺が……守りたいんだ……』



弟のその思いに甘えるように、
寄り添う様に、俺たちは雪貴を迎え入れた。

雪貴の心の拠り所も作らないと、
アイツ自身も壊れていきそうな危うさがあったから……。



隆雪が目覚めるまでの間、
必死でAnsyalに力を貸してくれているのは、
まだ高校生になったばかりの、アイツの弟。

宮向井雪貴(みやむかい ゆきたか)。



隆雪不在のAnsyalを預かるのは、
結成メンバーである俺の肩に乗っかっていて、
毎日がプレッシャーに押しつぶされそうになるのを感じながら
何とか、日々をやりくりしていた。


そんな俺の緊張の一日が、
Ansyalの今日のLIVEが幕を閉じる。