多分……この感情は、
嫉妬に近いのかもしれない。


そんなことを考えてると、言葉にすることが出来なくて
沈黙のまま、車はお寺の駐車場へと辿り着いた。


「お水も持って行かないといけないよね。
 ついていこうか?」


車を停めて声をかける託実。

だけど……この場所には「託実の大切な人が眠ってる」。
そう思うと、一緒について来て欲しいとは言えなかった。

託実と一緒に居る時間は増えても、
私たちの関係は何?って聞かれたら答えれない。



恋人同士のデートって思いたいのは私のエゴ。


本当は違うかもしれない……。
だったら、お姉ちゃんにどうやって紹介していいかなんてわかんない。


「託実さん、ごめんなさい。

 お気持ちは嬉しいけど、今日は一人で行きます。
 すぐに戻ってくるので、申し訳ないですけど待っててください」

そのまま鞄を残して、花束を抱えてお姉ちゃんのお墓へと向かう。

途中、携帯で水を汲んで運ぶのは忘れずに。


陽が落ちた墓地で慌てて、
花をさして新しい水を杓子で足すとゆっくりと手を合わした。





お姉ちゃん、今日は遅くなってごめん。
仕事で少し出張に行ってたの。

今からもデートでいいのかな?
凄く一緒に居るだけで安心出来る人と過ごすの。

お姉ちゃんにずっと話してた、
私の憧れの人だよ。


その人が待ってるから、今日は行くね。
またゆっくりと陽が高い時に来るから。






そう言って報告を済ませて、
水桶を返し、託実の元へと走りだす。


「お帰り。
 お姉さんとは、ゆっくりと話せた?」

「はい。
 いつも私の心が整頓できたら、
 託実さんにもお姉ちゃん紹介しますね」

「有難う。
 んじゃ、いつものようにアメジストホテルに行こうか?」

「はいっ。
 私、お腹すいちゃいました。
 今日、お昼ご飯殆ど取れなくてスティックバーを半分かじっただけなんです」

「じゃ早く行かないとね」



そう言って、車を走らせた託実は
何時ものアメジストホテルのエントランスへと車を横付けした。


「亀城様、喜多川様、お待ちしておりました」


いつもの様に丁寧に迎えられた私たちは、
エントランスから、佐喜嶋総支配人に案内されて
何時もの部屋へと通される。