人というのは、忘れるものです。

私は、ここまでの経緯を一切覚えていません。

なので、本当に祖父母を父母だと、叔母を姉だと思って暮らしていました。

皆、私にめいっぱい愛情を注いで育ててくれました。




祖母は、精神病を患っています。

突然不安になったり、病んだり、情緒不安定。

そんなとき、一番に気付いて手を差し伸べるのは私でした。

「お母さん、大丈夫?どうしたの?」

「怖くなったの?大丈夫だよ、私がいるからね」

まだ保育園に通っているような小さな子供がすることではないと思いますが、気が付けば私の役目になっていました。

私がいないときは、祖父は無視するし叔母は部屋にいるので気付きません。

「お父さんはいっつもそうやって無視する!!気付いてくれるのは真白だけよ!」

(私がしっかりしなきゃ、いけないね。)

お母さんが何を望んでいるかを分かるようになるまで、そう時間はかかりませんでした。


大丈夫?って聞いて欲しいんだよね?
私がいるよ、って言って欲しいんだよね?

だったら、その言葉をあげるよ。


私はその頃から、ひたすら皆の望むことに答えようと思うようになりました。


家族で買い物に行ったとき見つけた、可愛いぬいぐるみ。
私はそれをぎゅっと抱き締めて、反応を伺いました。

「真白。いらないよね?」

これは、欲しがっちゃダメなのか。

「うん...いらないよ」

きちんと棚に戻して、そう言う。


子どもらしく駄々をこねることもあった。

けど、基本的には「聞き分けのいい子」。









(ハッピーセットのおもちゃ、今プリキュアなんだ...!)

「真白、ハッピーセットじゃなくていいよね?」

「...うん、いいよ」