祖父も叔母も、祖母のことを「お母さん」と呼びます。

なので私はそれを真似して「お母さん」と呼ぶようになったそうです。

たまに本当の母親が帰ってきたとき、私は喜んで「お母さん」と呼びました。

けど、

「お母さんじゃないでしょうっ、ひーちゃんって呼びなさい!!!」

何故か、祖母が怒鳴る。

意味が分からず泣き叫ぶ私を慰めながら、母親は祖母と戦いました。

「なんでお母さんって呼んだらあかんの!?この子の母親は私やで!!」

「全然帰ってこんやんか!育ててんのは私よ!!」

何で二人が怒ってるのか分からない。けど、きっと自分のせい。

そう思って泣きじゃくる私を何度も見て、母親は悩み、決めました。

「...わかった、じゃあ私がこの子の母親やめるわ。だからもう真白に怒らないで」

(それで、真白が理不尽に怒鳴られないのなら。
「母親」をやめよう。)

それ以来、母親のことを、陽なのでひーちゃんと呼ぶようになりました。

そして祖父母を父母と、叔母を姉と呼び、暮らすようになりました。


あの時なぜ祖父母があんなに怒ったのか。

「真白がお母さんって呼んでくれたのが嬉しかったから。真白のお母さんでいたいと思ったから」

祖母は、そう答えました。