しばらくして、樹里くんが戻ってきた。
「はい、アイス。バニラ食べれるよね?」
樹里くんの問に、私は頷く。
渡してくれたスプーンを
受け取ろうとした時…。
カラーン…とスプーンが私の手から落ちて、
床を滑っていく。
「あ…ごめ…」
私は苦笑いしながら、落ちたスプーンを
拾おうと身を屈めた時、
「ひよちゃんは座ってて」
と、樹里くんがスプーンを拾った。
普段の樹里くんからは有り得ない程の
手際の良さで、アイスを開けて
アイスをスプーンですくう。
「持つの、だるいよね。はい、あーん」
「えっ…!?」
私はじっと樹里くんと、
スプーンに盛られたアイスを交互に見た。
熱のせいか、正しい判断がしにくい。
私は考えることをやめて、
素直に口を開けることにした…。
