「まだ泣きたいんなら、泣いていいから」



その言葉にトクン…と、私の心臓が
温かな脈を打つ。



「…そ、そんな、樹里くんに悪いし…!
もうさっきので十分っていう、か…」



私が平気を装うとするのを
見透かしたような樹里くんの瞳が、
私を見据えていた。



…でも、言われてみれば、私の中は
もういろんな感情でぐるぐるだった。



”悲しい”、”寂しい”、”辛い”、
”憎い”、”ずるい”、”羨ましい”……。


数え切れない感情が渦巻いている。




「…っっ……」



なんで、樹里くんには
分かってしまうんだろう。



キライ…だったはずなのに、
なんでこんな…気持ちが揺れるんだろう。


樹里くんがもう一度、
私をぎゅっと優しく抱きしめた。



「俺は、さんざんひよちゃんを
泣かせてきた男だけど、ホントは
ずっと好きでたまらなかった…」



私の肩を抱く手が
少し震えているのに気が付く。



「今だって…ひよちゃんを
壊してしまわないか、不安でたまらない」