碧海さんの私の肩を掴む手が
ブルブルと震えている。


「…確かに、彼の件は私のせいです。
でも、郁翔はほんとに幼馴染みです。
ただ、それだけです。
あなたが心配するようなことは
何もありませんから」



心配することなんて、ない。

彼女を大事に想ってなきゃ、
あんな笑顔なんてできない。



「郁翔は過保護なとこがあるから…。
誰でも気になったら、
ほっとけないんですよ」


私は笑顔で続けた。



「…私はそれ以上あなたたちに踏み込んだりしないし、踏み込もうなんて思ってない。
だから……郁翔のこと、どうか………………」




目の端にじわりと
涙が浮かびそうになるのを感じる。



「どうか、郁翔のこと…よろしく
お願いします…幸せにしてあげて
ください……」



私はそれだけ告げると、
彼女の手を払って歩き出した。



「…っ」



歩き出した途端、涙が溢れた。




幸せになって欲しいと思うのは事実。
けど、幸せになって欲しくないのも事実。



…神様。
私…こんな所にいなければよかった。



女の子じゃない方が良かった。



女の子じゃなければ、郁ちゃんの
そばにいられたかもしれない。