「郁ちゃん…離して……」



ひよりがぐっと俺の体を引き離した。



「…私の方こそ…避けるような真似して
本当にごめんね…。
一緒に帰れなかったこと、
子供みたいにちょっと拗ねちゃった」



ひよりはそう言うと、笑った。



「心配かけてごめんね。
ホント…こんなワガママな幼馴染みで
ごめんね」

「ひより……」



その時のひよりの笑顔を、俺は
忘れられないだろう。

今にも泣きそうな顔なのに、
必死に涙をこらえて笑顔を作る、
ひよりの顔を…。



「……私達は、何で
幼馴染みなんだろうね……」



ひよりの呟きに顔を上げる。



「ひより、どういう……」




意味を問いただそうとした
俺の声を遮るように、


「……郁ちゃん、お大事にね」



と、ひよりは言うと、
屋上を出ていった。



”『私達は、何で幼馴染みなんだろうね』”



その言葉だけが、俺の胸に何故か
突き刺さって取れなかった……。