「待って…!」

追いついて、ひよりの腕を掴む。


「!…離して…っ…」


ひよりが手を振り払おうとする。



「ひより、話を…」

「郁ちゃんから聞く話なんてないっ!」


身を捩りながらひよりが怒鳴る。


「っ…!」


完全に手を振り払われそうになって、
俺はひよりを抱きしめた。



「っ…!?」


驚いたのかひよりの動きが止まる。



「ごめん、ひより……」


ずっと言いたかった言葉を口に出す。




「あの日一緒に帰ってやれなかったこと、
ただ、謝りたかったんだ…」

「…っ…」

「本当にごめん………ひより…」



ひよりの肩に顔を埋める。



「…郁ちゃん……」


ようやく口を開いたひよりの声は、
涙声だった。